
九州の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法——"社員のキャリアを支える人"は、自分のキャリアをどう描くのか
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九州の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法——"社員のキャリアを支える人"は、自分のキャリアをどう描くのか
「周りの社員のキャリアについては一生懸命考えるんですが、自分のキャリアとなると全然考えていないんです。人事って、このまま続けていて大丈夫なのか。正直、不安になることがあります」
福岡市のメーカーで人事を担当している30代の方から、こんな相談を受けたことがあります。私はこれまで500社以上の企業で人事の仕事に関わってきましたが、人事担当者自身が自分のキャリアに悩んでいるケースは非常に多いのが実態です。
人事は、社員の採用から育成、評価、報酬、退職まで、組織の中で最も「人のキャリア」に近い仕事です。しかし皮肉なことに、他者のキャリアを支える側にいるがゆえに、自分自身のキャリアについて真剣に考える時間を持てていない人が多い。
九州の中小企業では、人事担当者が1〜2名という企業がほとんどです。日々の業務に追われる中で、自分の将来について考える余裕がないというのが正直なところでしょう。
この記事では、九州の企業で人事を担当している方に向けて、「人事担当者自身のキャリア」をどう考え、どう築いていくかについて、私なりの考えをお伝えしたいと思います。
人事担当者が「キャリアの迷い」を感じやすい理由
成果が見えにくい仕事
人事の仕事は、営業のように売上という数字で成果が測れるわけではありません。「採用した人材が3年後に活躍した」「研修を企画したことで組織が変わった」——こうした成果は時間軸が長く、しかも人事だけの功績とは言い切れません。
この「成果の見えにくさ」が、人事担当者のキャリアに対する不安の原因の一つです。「自分は何ができるようになったのか」「何を成し遂げたのか」を言語化しにくいために、自分の市場価値に自信が持てなくなるのです。
専門性の幅広さと深さのジレンマ
人事の仕事は領域が広い。採用、教育研修、評価制度、報酬制度、労務管理、組織開発、人事企画——すべてを一人で担当している九州の中小企業の人事担当者は少なくありません。
幅広い業務を経験できることは強みですが、一方で「すべてが中途半端」と感じるリスクもあります。採用も労務も評価制度もひと通りやったけれど、どれも専門家と呼べるレベルには達していない。この状態が、キャリアの不安を増幅させます。
ロールモデルの不在
九州の中小企業では、人事部門の先輩社員がいないケースが多いです。自分が会社で初めての専任人事担当者だという方も珍しくありません。
身近にロールモデルがいないと、「人事としてこの先どうなっていくのか」「人事のキャリアパスはどんなものか」がイメージしにくい。営業であれば「営業マネージャー」「営業部長」「役員」という道筋がある程度見えますが、中小企業の人事にはそうした明確なキャリアパスが用意されていないことが多いのです。
人事のキャリアを考えるための三つの視点
視点1:「何ができるか」を棚卸しする
まず、自分のスキルと経験を棚卸しすることから始めます。
人事の仕事を大きく分類すると、「オペレーション系」と「戦略系」に分けられます。
オペレーション系は、給与計算、社会保険手続き、勤怠管理、入退社手続きなど、正確さと効率が求められる業務です。戦略系は、人事制度の設計、採用戦略の立案、組織開発、人材育成計画の策定など、経営に直結する業務です。
自分がこれまで経験してきた業務を、この二つの軸で整理してみてください。どちらに比重が大きいか。どちらに自分の強みがあるか。今後、どちらの方向にキャリアを伸ばしたいか。
北九州市のIT企業で人事を担当する方は、この棚卸しを行った結果、「自分はオペレーション系の業務に時間を取られているが、本当にやりたいのは戦略系の仕事だ」ということに気づきました。この気づきが、キャリアの方向性を定めるきっかけになりました。
視点2:「人事として何を実現したいか」を言語化する
次に、「人事として何を実現したいか」という問いに向き合います。
「社員が生き生きと働ける組織を作りたい」——こうした思いは大切ですが、もう少し具体的に考える必要があります。
「離職率を下げたい」のか、「採用力を強化したい」のか、「管理職の育成を仕組み化したい」のか、「人事制度を抜本的に見直したい」のか。自分が最も情熱を持てるテーマは何か。
この問いに対する答えが、キャリアの方向性を示してくれます。「採用力を強化したい」のであれば、採用マーケティングや候補者体験の設計を学ぶ。「人事制度を見直したい」のであれば、報酬設計や等級制度の専門知識を深める。
視点3:「経営の言葉」で語れるようになる
人事担当者のキャリアにとって、最も重要なスキルの一つが「経営の言葉で語れること」です。
「人にとって良いことだから」という理由だけで人事施策を提案しても、経営者には響きません。「この施策により、離職コストが年間○○万円削減できる」「この育成投資は、3年後に管理職候補を○名確保するためのものだ」——経営数字と紐づけて語れることが、人事担当者の価値を飛躍的に高めます。
私がこれまで見てきた中で、経営から信頼される人事担当者に共通するのは、「人事の施策を事業成果と結びつけて説明できる力」を持っていることです。
九州の人事担当者が選べるキャリアの方向性
方向性1:社内でのキャリアアップ
現在の会社の中で人事のポジションを上げていく道です。人事担当者から人事マネージャー、人事部長、あるいはCHRO(最高人事責任者)へ。
中小企業では「人事部長」というポジション自体がないこともありますが、人事の責任者として経営に直接関与するポジションを目指すことは十分に可能です。
この方向性を選ぶ場合に大切なのは、日々のオペレーション業務だけでなく、経営会議への参加、事業計画への関与、中長期の人材戦略の策定など、「経営に近い仕事」を積極的に引き受けることです。
熊本市の建設会社の人事担当者は、入社5年目から経営会議にオブザーバーとして参加するようになり、7年目には「人事・経営企画室長」として経営の一翼を担うポジションに就きました。
方向性2:人事のスペシャリストとして深める
人事の特定領域で専門性を深めていく道です。例えば、採用のスペシャリスト、組織開発のスペシャリスト、報酬制度設計のスペシャリスト、労務管理のスペシャリストなど。
特定の領域で深い専門性を持つことは、市場価値を高めます。九州でも、採用に強い人事、制度設計に強い人事、労務に強い人事は引く手あまたです。
この方向性を選ぶ場合は、自分の得意領域や興味のある領域を見極め、外部の研修やセミナーで知識を深めるとともに、実務で経験を積むことが重要です。
方向性3:人事コンサルタントとして独立する
自社の人事だけでなく、複数の企業の人事課題を支援するコンサルタントとして独立する道です。
九州には、中小企業の人事課題を解決できるコンサルタントが不足しています。特に、大企業出身のコンサルタントが多い中で、「中小企業の現場をわかっている人事コンサルタント」の需要は高い。
この方向性を選ぶ場合は、複数の企業で人事の実務を経験すること、幅広い領域の知識を身につけることが準備として必要です。
方向性4:経営側へのキャリアチェンジ
人事の経験を活かして、経営者や事業責任者にキャリアチェンジする道です。
人事は、組織全体を俯瞰する視点を養える数少ないポジションです。各部門の人材、組織の課題、社員のモチベーション、経営者の考え——これらを総合的に把握している人事担当者は、経営に必要な視野を持っています。
福岡市のベンチャー企業では、人事マネージャーが事業部門の責任者に転じ、「人と組織を動かす力」を活かして事業を成長させた例があります。
九州の人事担当者がキャリアを築くための具体的な行動
社外のネットワークを作る
九州の中小企業の人事担当者は、社内に相談相手がいないことが多い。だからこそ、社外のネットワークが重要です。
福岡を中心に、人事担当者の勉強会や交流会は複数開催されています。同じ立場の人事担当者と情報交換することで、自分の視野を広げ、キャリアのヒントを得ることができます。
また、社会保険労務士や人事コンサルタントなど、人事の専門家とのつながりを持つことも有益です。彼らから最新の法改正情報や他社の事例を得ることで、自分の知識をアップデートできます。
数字で語る習慣を身につける
人事の仕事を「数字」で語れるようになることは、キャリアの武器になります。
採用コスト、離職率、一人当たり人件費、研修投資額、労働分配率——人事に関する数字を日常的に追いかけ、経営者に対して「人事の現状」を数字で報告する習慣を身につけてください。
この習慣は、「人事としての専門性」と「経営との接点」の両方を強化します。
学び続ける姿勢を持つ
人事の世界は変化が速い。労働法規の改正、働き方の多様化、テクノロジーの進化——常に新しい知識のインプットが必要です。
人事関連の書籍を月に1冊は読む。人事系のウェブメディアを定期的にチェックする。年に数回は外部のセミナーや研修に参加する。こうした学びの習慣を継続することが、キャリアの土台を強くします。
自分の仕事を「言語化」する
人事の仕事は、意識しないと経験が蓄積されません。日々の業務の中で「自分が何をして、どんな成果が出たか」を記録する習慣を持つことをお勧めします。
「月次の採用報告を作成する中で、応募経路ごとの歩留まりを分析し、効果の低い媒体を見直した結果、採用コストを15%削減した」——こうした経験を具体的に言語化しておくことで、自分のスキルと成果を客観的に把握できるようになります。
組織として人事担当者のキャリアを支える
経営者の役割
人事担当者のキャリアは、本人の努力だけでなく、経営者の姿勢にも大きく左右されます。
人事担当者を「管理業務の担い手」としてだけ見るのか、「経営のパートナー」として見るのか。この違いが、人事担当者のキャリアの幅を決めます。
経営者が人事担当者を経営会議に参加させ、事業戦略の議論に巻き込み、人事の視点から意見を求める。こうした機会を提供することが、人事担当者の成長を促します。
大分市の製造業では、経営者が「うちの人事には、人事のプロになってほしい」と明言し、外部研修への参加費を全額会社負担にしています。この投資は、人事担当者のモチベーション向上と能力開発に直結しています。
人事担当者への投資を惜しまない
人事担当者の育成に投資することは、組織全体の人事機能を向上させることにつながります。
外部研修やセミナーへの参加費用、資格取得の支援、書籍購入費の補助——これらの投資は、金額としては大きなものではありませんが、人事担当者にとっては「会社が自分のキャリアを支えてくれている」という実感につながります。
人事担当者のキャリアは「自分で作る」もの
人事の仕事は、社員一人ひとりのキャリアに寄り添う仕事です。しかし、自分自身のキャリアは、誰かが設計してくれるものではありません。自分で考え、自分で選択し、自分で行動する必要があります。
九州の中小企業で人事を担当している方に、私が伝えたいのは、「人事の仕事は、キャリアとして非常に魅力的だ」ということです。人と組織に関わる仕事は、AIに代替されにくい。経営に直結する仕事であり、経験を積めば積むほど価値が上がる。
ただし、その価値を最大化するためには、自分自身のキャリアに対する意識的な投資が必要です。「何ができるか」を棚卸しし、「何を実現したいか」を言語化し、「経営の言葉で語る」力を磨く。この三つを継続することで、人事担当者としてのキャリアは確実に広がっていきます。
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