
九州の企業がリーダーシップ開発を「研修頼み」にしない方法——日常業務の中でリーダーを育てる仕組みづくり
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九州の企業がリーダーシップ開発を「研修頼み」にしない方法——日常業務の中でリーダーを育てる仕組みづくり
「リーダーシップ研修に社員を送ったんですが、帰ってきたら一週間で元に戻りました」
北九州市の建設会社の社長が、苦笑しながらそう言いました。私はこれまで500社以上の企業で人事に携わってきましたが、この「研修の効果が続かない」という悩みは、九州の企業で特に頻繁に耳にします。
リーダーシップ開発を「研修」だけに頼るのは、ダイエットを「ジムに通う日だけ」で完結させようとするのに似ています。研修で得た知識や気づきは、日常業務の中で実践しなければ定着しません。しかし現場に戻れば目の前の業務に忙殺され、研修で学んだことは記憶の彼方に消えていく。
九州の中小企業にとって、外部研修に社員を送る費用と時間の負担は小さくありません。福岡への出張費、不在時の業務カバー、研修費用——それだけの投資をして効果が出ないのであれば、投資の仕方を根本的に見直す必要があります。
この記事では、研修を否定するのではなく、研修を「きっかけ」として位置づけつつ、日常業務の中でリーダーを育てる仕組みについて考えます。
九州の企業が抱えるリーダーシップの課題
管理職の高齢化と後継者不在
九州の中小企業では、課長・部長クラスの管理職が50代後半〜60代に偏っている企業が多く見られます。次世代のリーダー候補が育っていないまま、管理職層がまとめて定年を迎えるという「リーダーシップの崖」が目前に迫っています。
大分市の化学メーカーでは、5人いる部長のうち4人が3年以内に定年を迎えます。しかし部長候補として育成されてきた社員は1人もいませんでした。「気づいたときには手遅れだった」と人事担当者は焦りを隠せません。
「プレイヤー」から「マネージャー」への転換の壁
九州の企業では、営業成績が良い社員や技術力が高い社員をそのまま管理職に昇格させるケースが一般的です。しかし、優秀なプレイヤーが優秀なマネージャーになるとは限りません。
「自分で仕事をする」ことと「人を通じて成果を出す」ことは、まったく異なるスキルセットを必要とします。この転換がうまくいかず、管理職になっても「一人で仕事を抱え込む」「部下に任せられない」という問題が起きています。
地域の教育資源の偏り
リーダーシップ研修やマネジメントスクールは、福岡市に集中しています。地方都市の企業にとっては、受講するだけでも移動と宿泊のコストがかかります。オンライン研修が増えたとはいえ、リーダーシップのような対人スキルは対面での学びが効果的な面もあり、地方企業にとっては悩ましい状況です。
研修が効かない3つの理由
理由1:インプット過多
2日間の集合研修で、リーダーシップ理論、コミュニケーションスキル、コーチングスキル、問題解決手法、チームビルディングなどを詰め込む。頭ではわかった気になっても、体に染みついていない知識は現場では使えません。
理由2:職場環境が変わらない
研修で「部下の話を最後まで聴こう」と決意しても、職場に戻れば毎日5件の会議、20件のメール対応、トラブル処理が待っている。物理的に「聴く時間」がない環境では、研修での学びを実践する余地がありません。
理由3:フォローアップがない
研修後のフォローアップがないまま放置される。「あの研修、どうだった?」と聞かれることすらない。実践を支援し、進捗を確認し、困ったときに相談できる仕組みがなければ、行動変容は起きません。
日常業務の中でリーダーを育てる7つの方法
方法1:ストレッチアサインメント
現在の能力より少し難しい仕事を意図的に任せることで、リーダーシップを実践的に鍛えます。
ポイントは「放り込む」のではなく「設計して任せる」ことです。どんな経験をさせたいのか、どのレベルのサポートを提供するのかを事前に考えた上で任せます。
福岡市東区のIT企業では、リーダー候補の30代社員に「新規事業の立ち上げプロジェクト」のリーダーを任せました。予算管理、メンバーのアサイン、クライアントとの交渉——これらを実際に経験することで、座学では得られないリーダーシップスキルが身につきました。「100時間の研修より、1つのプロジェクトリーダーの経験」——上司はそう振り返っています。
方法2:シャドーイング
リーダー候補が、経営者や上級管理職の仕事ぶりを間近で観察する「シャドーイング」は、リーダーシップの暗黙知を学ぶ有効な方法です。
佐賀市の建材会社では、次期管理職候補が月に1日、社長の業務に同行する制度を設けています。取引先との交渉、社内の意思決定プロセス、クレーム対応——経営者がどう判断し、どう行動しているかを直接観察することで、教科書にはない「経営感覚」が身につくと好評です。
方法3:アクションラーニング
実際の経営課題をテーマに、少人数のチームで解決策を検討し、経営陣に提案する。この「アクションラーニング」は、研修と実務を融合させたリーダーシップ開発手法です。
熊本市のサービス業の企業では、半年に1回、リーダー候補4〜5名のチームを編成し、実際の経営課題(例:「若手社員の離職率を半年で10%削減する」「新規顧客開拓の仕組みを構築する」)に取り組ませています。提案内容は経営会議で発表し、実行に移すかどうかの判断を受けます。
「架空のケーススタディではなく、自社のリアルな課題に取り組むから、学びの深さが全然違う」と人事担当者は言います。
方法4:逆メンタリング
若手社員がベテラン管理職に対して、デジタル技術や最新の業界トレンドについて教える「逆メンタリング」。これは一見リーダーシップ開発とは関係なさそうですが、若手社員にとっては「年長者に対して自分の意見を伝える」というリーダーシップの実践になります。
長崎市の物流会社では、20代の社員が50代の部長にSNSマーケティングの基礎を教える逆メンタリングを実施しています。最初は緊張していた若手社員が、回を重ねるごとに自信を持って発言できるようになり、その変化が通常業務でのリーダーシップ発揮にもつながっています。
方法5:クロスファンクショナルプロジェクト
部門を横断したプロジェクトにリーダー候補を参加させることで、「自部門の論理」だけでなく「全社的な視点」でものを考える力を養います。
鹿児島市の食品メーカーでは、営業・製造・品質管理の各部門から1名ずつ選抜し、「新商品開発プロジェクト」を年1回実施しています。異なる部門の視点を理解し、利害を調整しながらプロジェクトを前に進める経験が、将来の管理職としての基盤を作っています。
方法6:1on1ミーティングの活用
上司とリーダー候補が定期的に1対1で対話する1on1ミーティング。業務の進捗確認だけでなく、「あの場面でなぜそう判断したか」「チームメンバーとのコミュニケーションで困っていることはないか」といったリーダーシップに関する対話を組み込みます。
宮崎市の製造業では、管理職候補に対する月2回の1on1に「リーダーシップ振り返りの時間」を10分間設けています。「今月、リーダーとして意識したこと」「うまくいったこと、いかなかったこと」を上司と率直に話し合う場が、継続的な成長を支えています。
方法7:外部ネットワークへの参加
同業他社や地域の経営者会合に、リーダー候補を積極的に参加させることも有効です。九州には商工会議所や業界団体の勉強会が多く、他社の経営者や管理職と交流する機会が豊富にあります。
自社内だけでは視野が狭くなりがちですが、外部のネットワークに触れることで、「他社はこう考えている」「自社の常識は業界の非常識だった」という気づきが生まれます。この気づきが、リーダーとしての視野を広げるきっかけになります。
リーダーシップ開発を仕組み化するために
個々の施策を単発で実施するだけでは、組織としてのリーダーシップ開発にはなりません。仕組みとして定着させるためのポイントを整理します。
リーダーシップパイプラインの設計
入社から管理職登用までの「リーダーシップパイプライン」を設計します。入社何年目にどのような経験を積ませ、どのスキルを身につけさせるかを、あらかじめ計画しておきます。
例えば以下のようなイメージです。
- 入社1〜3年目:現場業務の習熟+後輩指導の経験
- 入社4〜6年目:小規模プロジェクトのリーダー経験+クロスファンクショナルプロジェクトへの参加
- 入社7〜10年目:大規模プロジェクトのリーダー経験+経営会議へのオブザーバー参加
- 入社10年目以降:管理職候補としての経営視点の習得+外部ネットワークの構築
経営者自身がリーダーシップの手本を見せる
リーダーシップ開発で最も影響力があるのは、経営者自身の姿勢です。経営者が部下の話を聴かない、一方的に指示を出す、失敗を許容しない——そういう組織では、どんな立派な研修をやってもリーダーは育ちません。
経営者が自ら「聴く姿勢」「挑戦する姿勢」「失敗から学ぶ姿勢」を見せることが、組織全体のリーダーシップ文化を形成します。
リーダーシップの開発は、研修会場ではなく日常業務の中で起こります。日々の仕事の中にリーダーシップを鍛える経験を意図的に埋め込み、その経験から学ぶ機会を設け、継続的にフィードバックする。この地道なサイクルの積み重ねが、九州の企業に次世代のリーダーを育てるのだと私は確信しています。
九州の企業でリーダーシップ開発に取り組みたい方には、「人事のプロ実践講座」がおすすめです。育成設計からパイプラインの構築まで、実践的に学べます。
人事の最新知見を継続的に学びたい方は、人事図書館への入会もご検討ください。
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